【感想レビュー】ハネチンとブッキーのお子さま診療録(佐原ミズ/北岡寛己):育児の中で大変な事態、それは子どもが病気になった時。困難な状況下で親子の絆が強くなる。

こんにちは、ハナコです。

皆さんは、小さい頃病気がちな子どもでしたか?それとも、元気いっぱい風邪一つ引かない子どもでしたか?

“病気”と一言で言っても、風邪、中耳炎などウィルスによるものもあれば、朝が起きられない起立性調節障害といった自律神経の病気まで様々あります。

小さい頃の私は病気がちで、学校を早退したり入院したりすることが多かったのですが、辛い症状を和らげてくれる病院が大好きでした。また、遊び相手や話し相手になってくれた看護師さんたちも好きでした。ただ、不愛想で忙しそうなお医者さんは、怖くて苦手でした。小児科医“ブッキー”のような、変わっているけれど親身で優しいお医者さんに会ってみたかったです。

本日紹介する漫画は、小児医療をテーマにしていますが、“医療マンガ”というだけでは足りない、家族や友達、近所の人々との繋がりも描かれているハートフルな小児医療漫画です。

基本情報

タイトル:ハネチンとブッキーのお子さま診療録

作者:佐原ミズ/北岡寛己

出版社:コアミックス

雑誌:ゼノンコミックス

巻数:既刊2巻(2024年6月現在)

あらすじ ※公式ホームページより

妻を亡くし、シングルファザーになった、サラリーマンの羽根田。二人の子どもを、突如ひとりで育てることになり、理解不能な子どもの一挙一動に、振り回される毎日を送っていた。ある日、電車内で体調を崩した息子を救ったのは悪魔のようなメイクを施した若き小児科医・琴吹だった——。小児医療を舞台に紡がれる親子のハートフル医療ストーリー!

読みたいと思ったきっかけ

 作者の佐原ミズさんを初めて知ったのは、『マイガール』でした。『マイガール』は2009年に相葉雅紀さん主演でドラマ化もしています。『ハネチンとブッキーのお子さま診療録』を読もうと思ったきっかけは、まさに作者買いでした。佐原ミズさんの絵は見やすく綺麗で、ストーリーも人と人との繋がりを丁寧に描いている漫画家さんです。また、随所にある登場人物同士の掛け合いにクスっと笑えたり、ホロっと泣かせたりするところも面白いです。

オススメしたい人

 現在、妊娠中の方、育児中の方には子どもが罹りやすい病気の勉強になるので、ぜひ読んでほしい1冊です。もちろん、それ以外の方々にも読んでいただきたい1冊です。どの登場人物も、自分自身や身近な人に当てはまるところがあり、共感しながら読むことができると思います。

おすすめポイント①子どもが罹りやすい身近な病気がテーマ

 小児医療を題材にしている漫画は多いです。例えば、『放課後カルテ※1』『リエゾンーこどものこころ診療所―※2』『19番目のカルテ徳重晃の問診※3』『プラタナスの実※4』です。本書の特徴は、不器用で真面目なシングルファザーの“ハネチン”と4歳の息子と0歳の娘、デスメタルメイクの一風変わった小児科医“ブッキー”を中心に、中耳炎やウィルス性胃腸炎、起立性調節障害など子どもが罹りやすい身近な病気を描いています。小児医療を舞台にした際、心疾患や癌など深刻で命に関わる重い病気や、発達障害や摂食障害など脳機能に関わる病気がテーマになりやすいです。これらのテーマは、小さな子供たちの病気は治るのかとハラハラし、展開によっては涙を禁じ得ないストーリーであることが多いです。一方、『ハネチンとブッキーのお子さま診療録』は風邪や中耳炎、胃腸炎など身近な病気を扱っているため、ストーリーは緩やかで劇的な展開はありませんが、育児中の親御さんや子どもと関わる仕事に就いている方にとって、病気の勉強になります。それが、『ハネチンとブッキーのお子さま診療録』の醍醐味だと思います。

※1『放課後カルテ』作者:日生マユ 出版社:講談社 巻数:全16巻
※2『リエゾンーこどものこころ診療所―』原作・漫画:ヨンチャン 原作:竹村優作 出版社:講談社 巻数:既刊17巻(2024年5月現在)
※3『19番目のカルテ徳重晃の問診』作者:富士屋カツヒト・下川剛史 出版社:コアミックス 巻数:既刊9巻(2024年4月)
※4『プラタナスの実』作者:東元俊哉 出版社:小学館 巻数:全10巻

おすすめポイント②病気を通して大切な存在や物事に気づき、成長する物語

 本書には、様々な成長が描かれています。主人公である不器用で真面目なシングルファザーの“ハネチン”は、シングルファザーになって初めて妻の存在の大きさや、子どもという貪欲で残酷で得体の知れない…だけど面白くて愛おしい存在に気づきます。そして、自分なりに家族を守っていこうと父としての自覚と覚悟を持ちます。他にも、一生懸命に育ててくれている母を気遣い、自分の本当の気持ちや体調を伝えられない中学生の女の子の成長。集団の中で上手くコミュニケーションがとれない、緘黙の友達を理解しようとする“ハネチン”の息子の成長など。大きく劇的な成長ではなく、小さな勇気や小さな思いやりで日常生活が少し変わる成長が描かれています。小児医療をテーマにしていますが、“医療漫画”というだけでは足りない、ハートフルなヒューマンドラマでもあります。

総評

ストーリー :4点 /5点
画力    :5点 /5点
キャラクター:3点 /5点
読みやすさ :4点 /5点
没入感   :3点 /5点
独創性   :4点 /5点

合計:23点 /30点

※各項目5点、合計30点満点

小児医療を舞台に紡がれる親子のハートフル医療ストーリーをぜひ読んでみてください。