【感想レビュー】おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!(練馬ジム):タイトルからは想像できなかった面白さ!偏見まみれでデリカシーの欠片もない48歳頑固親父が自分の偏見や価値観をアップデートしていく成長物語。

 こんにちは、ハナコです。

 皆さんは日常会話の中で、「これって普通だから」「あれって常識だから」と言ってしまうことはありませんか?私はよく口にしてしまいます。ただ、少し立ち止まって考えてみると、“普通”や“常識”と思っていることも、実際は私自身の価値観や好みを色濃く反映した偏った意見や考えなのかもしれません。

 令和はコンプライアンスの時代であり、セクシャルハラスメント、モラルハラスメント、パワーハラスメントなど、相手を不快にさせる言動を指す“〇〇ハラスメント”は至る所で耳にします。ハラスメントを無自覚に行う人たちは、総じて「そんなつもりはなかった」「自分は正しいことを言っているだけ」「ただの冗談」など言い訳をし、どれだけ相手を不快にして傷つけていたとしても、自分の言動を悔い改める人は少ないように思います。これも私の偏見かもしれませんが…。

 本日ご紹介する漫画は、偏見まみれでデリカシーの欠片もない48歳頑固親父が、個性あふれる人々や家族と向き合うことで、自分の偏見や価値観をアップデートしていくホームコメディ漫画です。

基本情報

タイトル:おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!

作者:練馬ジム

ジャンル:ヒューマンドラマ/ドラマ化

出版社:LINE Digital Frontier

雑誌:LINEマンガ

巻数: 全7巻

あらすじ ※公式ホームページより

 沖田誠48歳。世間の常識・偏見で凝り固まった彼には“最近の若者”が理解できない。上司にお茶を注がない女性、メンズブラ愛用の部下、そして可愛いものが好きな息子…。そんなある日、ゲイの青年・大地と出会う。初めてのセクシュアリティに思わず拒絶してしまうが、次第に彼の魅力に気付き、友だちになることに。そして知る、「その人の趣味や指向を他人が干渉するのはナンセンスだ」と。そう正に、おっさんの履くパンツがなんだっていいように! ──人としての成長を誓うおっさんは、無事“自分の中の常識”をアップデートできるのか!?各所で話題を呼ぶホームコメディ!

読みたいと思ったきっかけ

 2024年1月に、『おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!』は、原田泰造さん主演でドラマ化されていました。CMで予告が流れていましたが、タイトルからドラマの内容を想像しづらく、関心がありませんでした。ただ、ネットニュースでドラマの評価が高いことを知り、原作を読んでみようと思ったのがきっかけでした。

オススメしたい人

 自分の好きなものや、ハマっているものに自信がなく、自分らしさを出せないと思っている人に読んでほしい作品です。本作品は、偏見に満ちあふれているおっさんの成長物語ではありますが、自分の好きなものを好きだと胸を張って思いたい人に、ぜひ読んでいただきたいです。

おすすめポイント①他人の好みや価値観を否定しなければ、全部理解して受け入れる必要はない

 生きていく中で、知らず知らずのうちに自分の中に価値観やモラル、基準などが出来ていきます。それ自体が悪いことではなく、自分の生きる信念になっていたり、道標になっていたりします。ただ時として、人は自分の価値基準に無いものを否定したくなったり、受け入れられないと思ったりすることがあると思います。主人公の誠の部下でメンズブラを愛用している原西は、「どうしても受け入れられないものはとりあえず置いといて “否定”しないだけでも十分だって思いますよ。」と言っています。相手の気持ちや価値観を全部理解して受け入れていくことは難しいけれど、私達は否定しないだけで相手の好きなもの、延いては相手の存在そのものを肯定することになるのだと気づかせてくれます。

おすすめポイント②マイノリティーや偏見などセンシティブなテーマもコメディタッチで読みやすい内容

 主人公の誠は、銭湯に来たお客さんたちの履いている下着が、ボクサー、トランクス、ブリーフだけでなく、越中褌やビキニ、六尺褌、ストリングスなど多種多様なことに驚きます。そこで、誠は「性別…?ってのはパンツみたいだな。」「下着なんて個人の自由で好きなものを履けばいい。何を履いても誰の迷惑にもならないし、そんなプライベートなことは他人に公表しなくていいはずだ。性別も本来そうあっていいんじゃないだろうか」と学びを得ます。性別をパンツに例えるのもどうかと思いますが、世間の常識・偏見で凝り固まった誠が誠なりの理解で受け止めていく過程がとても面白いです。マイノリティーや偏見、個性的な趣味嗜好などセンシティブな話もコメディタッチで読みやすい内容になっているところがおすすめポイントです。

総評

ストーリー :5点 /5点
画力    :4点 /5点
キャラクター:4点 /5点
読みやすさ :4点 /5点
没入感   :3点 /5点
独創性   :4点 /5点

合計:24点 /30点

※各項目5点、合計30点満点

 偏見まみれでデリカシーの欠片もない48歳頑固親父が自分の偏見や価値観をアップデートして、家族と向き合っていくホームコメディをぜひ読んでみてください!